神の現存

  子供たち…は、​父親の​前で​良い子になろうと​なんと​健気に​努力する​ことだろう。

​ そして​王子たちは、​父である​王の​前で、​なんと​懸命に​王位の​尊厳を​保とうと​する​ことか。

​ ところで、​あなたは​常に、​偉大な王、​あなたの父なる​神のみ​前に​いる​ことを​知らないのか。

  何を​決めるにしても、​必ず神のみ​前で​ゆっくり考えてからにしなさい。

  神は​絶えず​直ぐ​そばに​おいでになる​ことを​確信する​必要が​ある。​神が​星の​輝く​空のかなたに​おられるかのように​生活し、​遠くに​おられると​同時に​直ぐ​そばにも​おられる​ことを、​私たちは​よく​考えないでいる。

​ 神は​愛情深い​父と​して​傍らに​おられ、​世界中の​母親たちが​自分の​子供を​愛する​ことができる以上に、​私たち一人​ひとりを​愛し、​助けの​手を​差し​伸べ、​霊感を​与え、​祝福し…、​赦してくださる。

​ 悪戯を​した後で、​もうしません、​と​父親の​しかめ面を​晴らした​ことが​幾度​あった​ことか。​そして​多分、​その​日の​うちに​同じ​ことを​繰返した…。​すると、​私たちの​父親は​本気を​よそ​おって​厳しい​調子で​叱るけれども、​同時に​心の​中では​不憫に​思い、​考える。​かわい​そうに、​一所​懸命、​いい子になろうと​頑張っているのに、と。

​ ​私たちの​父、​それも​実に​父親その​ものである​神なる​御父は、​私たちの​傍らに​おられると​同時に、​天に​おいでになる主である​ことを​深く​確信し、​身に​しみて​感じる​必要が​ある。

  毎日​幾度も、​心を​神に​上げて​感謝する​習慣を​身に​つけなさい。​神が​あれや​これや​下さるから。​軽蔑されたから。​必要な​ものが​ないから、​必要な​ものが​あるから。

​ ご自分の​母であり、​あなたの母でもある方を​たい​へん美しくなさったから。​太陽も​月も、​あの​動物も、​あの​植物も、​お造りに​なったから。​あの​人を​雄弁にし、​あなたを​口下手に​なさったから…。

​ すべてに​おいて​神に​感謝しなさい。​すべては​善い​ものだからである。

  主の​お住まいである​教会の​外壁や​塔が​遠くに​見えた​時、​その​度に、​そこの​聖櫃に​入り込まない​ほど​盲目で​軽率な​態度を​とらないようにしよう。​主は​あなたを​待っておいでになるのだ。

​ また、​キリストが​侮辱されている​ことが​分かっている​場所を​通りかかったなら、​無原罪の​マリアに​せめて​射祷を​一つ​お捧げしない​ほど​盲目で​軽率な​態度を​とらないようにもしよう。

  通いなれた​町の​通りで、​新たに​もう​一つ​聖櫃を​見つけたら、​嬉しくならないだろうか。

  ある​祈りの​人が​言った。​イエスが、​意向に​おいて​私たちの​目的、​愛情に​おいて​私たちの​愛、​言葉に​おいて​私たちの​話題、​行いに​おいて​私たちの​模範に​なってくださいますように。

  あなたに​勧めた​神の​現存を​失わないための​聖なる​〈工夫〉を​活用しなさい。​射祷、​愛徳唱と​償いの​祈り、​霊的聖体拝領、​聖母の​ご絵に​〈視線を​注ぐ​こと​〉などである。

  独り?​ あなたは​独りぼっちではない。​遠くから、​私たちは​いつも​あなたに​付き添っている。​それだけでなく…、​恩寵​(恩恵)の​状態​(大罪の​ない​状態)に​ある​あなたの​霊魂には​―あなたと共に​います―聖霊が​おいでになり、​あなたの​思いと​望みと​行いの​すべてに​超自然の​調子を​添えてくださっているのである。

  セントラル(マドリード大学)の​あの​優秀な​学生​(今頃、​どうしているだろうか)、​その​学生は​言っていた。​「神父様、​お話しくださった​こと…、​私は​神の​子だと​いう​ことを​考えていました。​すると​驚いた​ことに、​〈堂々と​胸を​張り〉、​心の​中で…​私は​神の​子であると、​誇りを​持って町を​歩いている​自分に​気づきました」。

​ 私は​確かな​良心に​かけて、​その​〈誇り〉を​育みなさいと​勧めた。

  あなたが​正しかった​ことは​疑わない。​あなたが​常に​神のみ​前に​いる​ことを​意識しつつ行動する​ことは、​よく​承知しているからである。​しかし、​そう、​しかし、と​言わなければならない。​あなたの​行いを​人間的に​判断する​人々が​いるかもしれないし、​事実そういう​人々が​いるのだ…。​だから、​人々に​良い​模範を​示す必要が​あるのだ。

  少なくとも​週に​一度、​イエスのもとに​行く​ために、​マリアとの​一致を​求めるなら、​もっと​神の​現存を​保つことだろう。

  な​ぜ木の​十字架なのですか、と​あなたは​尋ねた。​一通の​手紙を​引いて​答えよう。​「顕微鏡から​目を​上げると、​視線は​キリスト像の​ない​黒い​十字架に​出遭います。​キリスト像の​ない​この​十字架は​象徴であって、​他人には​分からない​意味が​あります。​そこで、​疲れて仕事を​止めようと​していた​人は、​ふたた​びレンズに​目を​近づけて​仕事を​続けます。​孤独な​十字架は​担い手を​待っているからです」。

  神の​現存を​保ちなさい。​そう​すれば、​超自然的な​生き方が​できるだろう。

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